Adjacency Pair(隣接ペア)の概念を応用して英語コミュニケーション力アップ!

コミュニケーション

こんにちは!仕事で英語が必要な日本人研究者とビジネスパーソンのEmpowermentをサポートをする英語コミュニケーションインストラクターのKeikoです。

Adjacency pair(隣接ペア)というConversation Analysis(CA = 会話分析)の領域で使われる概念があります。

CAの第一人者であるEmanuel SchegloffとHarvey Sacksが提唱しました。

このadjacency pair、興味深いコンセプトであるのと同時に英語コミュニケーション力を伸ばすための有用なヒントを与えてくれます。この記事では、簡単にadjacency pairの説明をした後、その概念をもとにコミュニケーションスキルアップに役立つ2つのポイントを解説します。

Adjacency pair(隣接ペア)とは

Adjacency pairは Glossary of linguistic termsによると、

“a unit of conversation that contains an exchange of one turn each by two speakers. The turns are functionally related to each other in such a fashion that the first turn requires a certain type or range of types of second turn

(SIL International, 2020)

と定義されています。

Adjacency pairは会話を構成する最小の単位であり、次の条件を満たしていることとされます:

  1. They consist of two utterances
  2. Adjacent positioning of component utterances
  3. Different speakers producing each utterance

(Schegloff & Sacks, 1973, p. 295)

簡単に言ってしまうと、adjacenty pairとは誰かの発言とそれに対する受け答えのことです。

Adjacency pairの概念で面白いのは、その構成部分であるFirst Pair Part (FPP = 1番目の発言)がSecond Pair Part (SPP = 2番目の発言)の内容を決めてしまうということです。

つまりadjacency pairには、決まったやり取りの「型」があるというのです。

例えば:

  • Greeting → greeting
  • Question → answer
  • Complaint → excuse/remedy
  • Offer → acceptance/rejection
  • Request → acceptance/rejection

など。

FPPに続くSPPは、必ず決まったグループに属する内容でないといけない、というわけです。

それではこのadjacency pairが、コミュニケーションスキルアップにどう結び付くかを見ていきましょう。

Adjacency pairに学ぶコミュニケーションのヒント1:相手の発言に対して必ず何か言う

Adjacency pairの概念によって明らかになるのは、人と人とのコミュニケーションにおいて、発言の後にはそれに続く受け答えがくるというexpectationがあるということです。

例えば、

“Hi!”

“What time is the meeting?”

“Can I help you with anything?”

という発言をした人たちは、あなたからのSPPを期待していると考えられます。

相手の発言だけではコミュニケーションは成り立ちません。

そのため、

“Hi!” に対して何も返事をしなかったり、

“Can I help you with anything?とせっかく聞いてくれたことに対してただ笑顔を返すのは、

そのexpectation, すなわちadjency pairのルールに反していると言えます。

自分の英語力に自信がないと、どうしても考えをうまく言葉にできなかったり、無言の笑顔でやり過ごしてしまうこともあるかもしれません。

でも相手はあなたからのutterance(SPP)を期待している、ということを常に頭に入れておいてください。

あなたからのSPPがないと、相手はメッセージが伝わらなかったと解釈し、発言を繰り返したり違う表現に言い換えてみたりとrepair行為に走るかもしれません。

もしくは、あなたが相手とコミュニケーションする気がないのだと誤解され、関係にひびが入ってしまうことにもなりかねません。

相手の発言の後にあなたからの受け答えがあって初めて会話が成立します。メッセージを受け取ったら、たとえ自信がなかったとしても文法が間違っていたとしても、必ず答えを返すよう心掛けましょう

Adjacency pairに学ぶコミュニケーションのヒント2:Adjancency pairの型に沿った決まり文句を覚える

ヒント1で「相手のFPPに対して必ずSPPを返すべき」というお話をしましたが、そのSPPは何でもいいというわけではありません。

「Adjacency pairには決まった型がある」のを覚えていますか?

つまり、

“Hi!”と挨拶してきた人は、あなたから挨拶を返してもらうことを、

“What time is the meeting?”と質問してきた人は、その質問への答えをもらうことを、

“Can I help you with anything?”と助けをオファーしてきてくれた人は、そのオファーが受理されるか否かを聞くことを期待しています。

そのため、

“What time is the meeting?”という質問に対して “Thank you!” と言ったり、

“Can I help you with anything?” とオファーされて “I believe it’s at noon.” と返してしまっては、とんちんかんで会話が成立しません。

さきほどもお話ししたように、挨拶には挨拶質問には質問の答えオファーには受理か拒否、といったように、相手の発言によってあなたの受け答えはおのずと決まってくるのです。

これは英語コミュニケーション力を伸ばしたい人にとってはgood newsです!

なぜかというと、adjacency pairの原理にもとづいて会話を見てみると、それぞれの発言への受け答えのオプションがかなり限られてくるからです。

つまり、「型」別にFPPの発言とそれに対応するSPPを決まり文句として覚えておけば、効果的な会話が可能になってしまう、ということなのです。

例えば、FPPがofferの時、SPPには acceptanceか rejectionがきます。

そこで、offerに対するacceptanceの表現とrejectionの表現をいくつか覚えておいてはいかがでしょうか。

Acceptance: 
“Thank you, that would be great!” 
“That would be helpful. Thank you.” 
“That’s nice of you. Thanks so much.”

Rejection: 
“Oh, that’s all right. Thank you anyway.” 
“Don’t worry about it. Thanks, though.”
“That's nice of you, but I'm all right.”

といったように。

そうすれば、FPPでどんなofferが飛び出した時にも、自動的にSPPが口から出てくるようになります。

例1:

FPP (相手の発言): Hey, can I help you with anything? (offer)

SPP (あなたの受け答え): That’s nice of you. Thanks so much. (acceptance)

例2:

FPP (相手の発言): Do you need a ride? (another offer)

SPP (あなたの受け答え): Oh, that’s all right. Thank you anyway. (rejection)

あなたもすでに英語の役立つ表現・決まり文句を学習していらっしゃるかもしれませんが、「FPPに対応するSPPを返す」というadjacency pairを意識すると、学習の効率もコミュニケーション力もグッとアップすること間違いなしです。

まとめ

Adjacency pairのコンセプトを意識することで、英語コミュニケーションがより効果的にできるようになります。

その理由は、発話がひとつからふたつに増えた時、つまりFPPにSPPが加わりadjacency pairができた時、ひとつの発話では起こり得ないことが可能になるという事実にあります。

Schegeloff & Sacksはこう説明しています。

What two utterances produced by different speakers can do that one utterance cannot is: by an adjacently positioned second, a speaker can show that he understood what a prior aimed at, and that he is willing to go along with that. Also by virtue of the occurrence of an adjacently produced second, the doer of a first can see that what he intended was indeed understood, and that it was or was not accepted.

(Schegloff & Sacks, 1973, pp. 297-298)

相手のFPPに対してSPPを返すこと、そして、そのSPPをしっかりFPPに対応させた内容とすることで、コミュニケーションをとる意思があなたにあること、そして相手のメッセージを正確に受け取ったということを相手に示すことができるのです。

何気ない言葉のやり取りにこれだけの重みがあること、そして人間が深く考えることもなく、このようにコミュニケーションを成立させていることに感動を覚えてしまいます。

さらにこの記事ではadjacency pairのコンセプトを応用することで、実際の会話の在り方にもとづいた効率的な英語学習ができ、英語コミュニケーション力アップにつながるというお話もしました。

アカデミック的にfascinatingで、しかも英語学習者にとってpracticalなヒントも与えてくれるadjacency pair、ぜひ頭の片隅に置いてコミュニケーションの現場で活かしてみてください。

References:

Nordquist, R. (2020, February 12). Adjacency pair (conversation analysis). ThoughtCo.
https://www.thoughtco.com/adjacency-pair-conversation-analysis-1688970

Schegloff, E. A. & Sacks, H. (1973). Opening up closings. Semiotica, 8(4), 289-327. https://doi.org/10.1515/semi.1973.8.4.289


SIL International. (2020). Adjacency pair. In Glossary of linguistic terms. Retrieved March 24, 2021, from https://glossary.sil.org/term/adjacency-pair#:~:text=Definition%3A,of%20types%20of%20second%20turn

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