「敵」を「味方」に変えるコミュニケーション力

コミュニケーション

人がキャリアや人生で成功するために必要なものとは何だと思いますか。

  • 優れた仕事のスキル?
  • 勤勉さ?
  • 好かれる性格?

Adversaries into allies: Win people over without manipulation or coercion(日本語版:『敵を味方に変える技術』)の著者であるBob Burgは“Ultimate Influence”を持っているかどうかが成功の鍵を握ると言います。

“Ultimate Influence” とは “the ability to get the results you want from others while making them feel genuinely good about themselves, about the process, and about you” (p. 1) のこと。

Ultimate Influenceを身に付ければ、強制的に相手の考え方を曲げさせたり、うまい言葉で相手をそそのかしたりすることなく、相手が純粋に喜んであなたの言葉に耳を傾け、最終的にはあなたも相手も気持ちよく最善の解決策へとたどり着くようなコミュニケーションをとることができるようになります。

Adversaries into alliesではUltimate Influenceを身に付けるために心がけることがわかりやすく説明されています。

その中でコミュニケーションスキルを磨いている日本人プロフェッショナルの方に特に役立ち
そうな3つのポイントを紹介します。

皆それぞれ異なる信条・世界観をもって生きていることを意識する

人は皆「真実」の中で生きています。

でもそれは、それぞれが歪んだレンズを通して見た「自分が真実と信じていること」でしかないのです。

それに気付かないと、コミュニケーションがうまくいかなくなります。相手にUltimate influenceを持つことが難しくなります。

Burgはこのように説明しています:

“As human beings we tend to believe that others think and feel as we think and feel. We are usually incorrect in that conclusion. People around us operate out of their own paradigm and worldview, and so do we. And without understanding this, we are stuck on the same level of misunderstanding and miscommunication as everyone else. (p. 61)

違う場所で生まれ、違う家庭環境で育ち、違う教育を受けてきたのだから当然と言えば当然ですが、普段のコミュニケーションの中でこのことをどれだけ意識していますか?

例えば仕事のミーティングで同僚やクライエントを説得するとき、

  • 「当然わかってくれるだろう」
  • 「普通に考えればこうするだろう」

という気持ちがどこかにありませんか。

これらは他の国に比べculturally diverseでない日本では特にありがちなassumptionです。

でも、

あなたにとって「正しいこと」を相手がそう見るとは限りません。

あなたが「当然」と思うことは相手にとって当然ではないかもしれません。

「〇〇じゃないですか」という言い方をする人がよくいますが、これにも、「私の言うことに当然賛同してくれると思うけど」というassumptionが見え隠れしています。

育った場所、家庭、環境がそれこそまったく違う人々が集まるグローバルなコミュニケーションにおいては、人の数だけ信条・世界観があります。皆それぞれが自分自身の「真実」、「正しいこと」、「当然」を胸に抱えて生きています。

それを意識しないと、あなたの言いたいことは相手に伝わらないでしょう。

知らないうちに誤解が生まれてしまうかもしれません。

そして悲しいことに、相手もあなたと同じように考えているとassumeしているので、相手を本当に理解することができないのです。

真に「わかり合える」コミュニケーションをするためには、「わかってくれるはず」のassumptionを捨て、「皆違う」という基本に立ち返ってみましょう。

会話の「フレーム」をあなたが設定する

まずは例からです。

通常$5.99もするBen&Jerry’sのアイスクリームが$2.99で買えるクーポンを持って近所のお店に行きました(クーポンはあらかじめオンラインで自分のカードに適用してあります)。

新しい味を発見!手に取りワクワクしてレジに向かいます。カードを出し、タッチパネルに「$5.99→$2.99」と表示されるのを待っていると、価格$5.99のままレジの人に支払いを催促されます。

こんなとき、あなたならどうしますか?

クーポンがあるからわざわざ買いに来たのに、もとの値段を請求されるとはfrustratingですよね。

でもここで、“I shouldn’t have to pay $5.99! I got a coupon. I know I sent the deal to my card. This happens to me all the time! You need to do something about it.”

などと吐き出したら、レジの人からどんな対応が返ってくるでしょうか?

$5.99払わされるか、「じゃあ買うな」と言われるか、どちらにせよ何とかしてあなたを助けてあげようと思ってはくれないでしょう。

Ultimate influencerだったら、自分の出方が会話の「フレーム」を決めてしまうことを理解しています。

そこで、

“I’m sorry for the trouble. I’m sure technical problems like this happen a lot. I don’t need to get the ice cream if it causes too much inconvenience for you.”

と言ってみてはどうでしょうか?

この発言では以下のポイントへの理解が踏まえられています:

  • クーポンが使えてあなたがBen&Jerry’sを$2.99で買えることは、あなたと相手両方にとって最善の結果である。
  • コンピューターがクーポンを認識しなかったことはレジの人にとってもfrustratingなこと。
  • これと似たような問題はよく起きる。
  • レジの人のせいではないのにお客さんからどなられる(よく起きるからよくどなられる)。

そんな中あなたから理解を示すコメントをもらったとしたら、レジの人は驚くと同時に「わかってもらえた」と感じ、あなたを助けてあげたいと思うでしょう。

マネージャーを呼んで何がいけないのかをチェックしてもらい、それでもクーポンがだめだったら手動で割引にしてくれるかもしれません。

アメリカでこんなカスタマーサービスがあり得るでしょうか!?

でもこれ、私の実体験です。

この後、

“Wow, thank you so much. That was so nice of you. Now I have something to look forward to tonight!”

と純粋な驚きと感謝を示したら、

“You’ve got the coupon, so it’s my job to make sure you get the deal.”

と、こちらが聞いてもうれしい、そして相手にとってはきっと言うのが誇らしいプロフェッショナルなコメント。

さらに、

“I’m a woman, so I understand. You need your ice cream, girl!”

と、なんだかパーソナルレベルでつながってしまいました。

こちらが最初に、”You and I are on the same side,” そして、 “I appreciate you” のポジティブな「フレーム」を設定したことで、一連のやり取りがこのフレームに沿って行われたのです。

Burgの言葉です

You have the power to set positive frames from which others–in all situations, both business and personal–can feel good about themselves and feel good about you. (p. 118)

お店の人とのやり取りだけでなく、日常の友人・同僚との会話でも、苦手なクライエントとの交渉でも、あなたが「フレーム」を設定することを心がけてみてください。

コミュニケーションの結果が驚くほど変わるはずです。

そして相手に対して好意・親しみを感じながら「いい会話ができた」とお互い気持ちよく会話を終えることができるでしょう。

相手に対してEmpathyを持ち、Tactでそれを伝える

相手の状況や心情を理解するempathyを持つことはUltimate Influencerとなり成功をおさめるのに必要不可欠です。

でもそれと同じくらい重要なのは、そのempathyを相手にうまく伝えるスキル(= tact)です。

Burgはこのように説明しています:

…with tact you can make that [a] point but allow the person to feel good about themselves, making them more open to embracing your message. With empathy, you can understand his feelings enough to know why you need to tell him this [your message]. (p. 155)

例えば部下が数週間かけて準備したパワーポイントの出来がいまいちで、やり直すよう指示したいとき、何と言えばいいでしょうか。

“These slides look awful. Look at the ugly colors. Plus, I have no idea what you are trying to say here. You need to redo them all from scratch.”

事実なのかもしれませんが、これではただ部下をムッとさせるだけです。これから気持ちよく協調を引き出すことも難しくなるかもしれません。

しかも、何が足りなかったのか、どうすれば効果的なスライドになるかを部下が学べる貴重な機会なのに、そういったフィードバックもありません。

では、

  • 部下が時間を費やして彼/彼女なりに考えてスライドを作成したこと
  • 部下が、いい仕事をして会社で成功したいと思っていること

に対してempathyを抱き、それを部下にtactを持って伝えるとしたら、どんな言葉が出てくるでしょうか。

“Thank you for getting these to me on time. I know you’ve put a lot of thought into them. I wonder if this design template represents who we are. Do you mind using a different one with the color scheme that matches our brand? Also, I don’t think your point is clear here. Maybe you can clarify what this slide is about?”

英語を話すとき、特にアメリカ人との会話では、なんでもかんでも思ったことを直接的に伝えるのがいい、と思っている人がいますが、これは誤解です。

日常会話でもビジネスにおけるやり取りでも、相手のことを思いやりその状況に1番効果的な言葉を選んでつかえる人はEmotional Intelligence (EQ)が高いと見られ高い評価を受けます。

人は皆、外からは見えない悩み、心配事、恐れ、悲しみを持っています。他の人の知らない状況・境遇をその時その時生きています。

それをちょっと意識することで、相手をおもう気持ち、Empathyが生まれるでしょう。

そして、最適な言葉を選んでそのEmpathyを相手に伝えたとき、相手はあなたに心を開き、相手との関係性も仕事も良い方向に向かっていくのです。

まとめ

いかがでしたか。

苦手な人との会話や難しいビジネス交渉など、「敵」になり得る相手とのやり取りは日常でもビジネスの場でも避けられません。

でもちょっとした心遣いと言葉の選び方で、会話の結末もその後の相手との関係もまったく違ったものになる、というreminderになったのではないでしょうか。

人生・キャリアで影響力を持ち成功したいと思っても、 自分の利益しか考えない“Me, me, me”の態度では難しいでしょう。相手を理解すること。相手を理解したいと思うこと。相手へのあなたの思いやりをしっかり言葉で伝えること。

とことん相手目線になり、お互いが納得できる結果に到達するというゴールを意識することが、Ultimate Influencerになるための一歩なのかなと感じます。

相手の心を動かす言葉を鍛えるのと同時に、そんな言葉が自然とこぼれ出るようなcharacterを磨いていきたいものです。

References:

Burg, B. (2013). Adversaries into Allies: Win people over without manipulation or coercion. Penguin Group.

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